洗濯物が干されたベランダをランウエーに見立て、モデルのように歩く。ピンクの髪の女性が身にまとうのは、ユニークな赤いワンピースに大粒パールのカチューシャ-。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で配信されている動画の〝主人公〟は、もうすぐ還暦を迎える主婦。新型コロナウイルス禍の閉塞(へいそく)感が漂う中、「服装が変われば、生き方も変わる」というメッセージが共感を呼んでいる。(中井芳野)
人目を引く装いで話題を集めているのは、大阪市淀川区の郷妙子(ごう・たえこ)さん(58)。「スタイリスト・TAEKO(タエコ)」を名乗り、遅咲きのファッションリーダーとして自分らしくなれる服装を発信する。
《50代の挑戦 アミタイツコーデ》。刺激的な言葉を添え、太ももがあらわになったショートパンツ姿を投稿すると、閲覧者から「いいね」を示すハートが次々に送られてきた。郷さんは「おばさんだって網タイツぐらいはきたい」とちゃめっ気たっぷりだ。
自身の見た目を「奇抜な宇宙人」と称するだけあって、郷さんのスタイリングは一風変わっている。シースルーのスカートやチャイナドレスを使った派手なコーディネートはお手のもの。ときには猫耳やアフロのかつらも取り入れる。
街中を歩けば、注目の的だ。「年相応の服を着た方がいい」。冷ややかな視線とともにこんな言葉が投げかけられることもあるが、気に留めない。「年相応ってなに?」
最初から現在のスタイルが確立されていたわけではない。25歳で結婚して妊娠し、育児に専念するため勤めていたアパレル企業を辞めた。だが、2児の子育てに追われるうちに軽度のうつ状態になった。育児のストレスを誰にも相談できず子供にあたってしまい、「なんて自分はだめなんだろう」と落ち込んだ。いつしか自身の個性を消すように、暗い色の服ばかり身に着けるようになった。
転機が訪れたのは約20年前。ベランダの窓に映った自分の姿を目の当たりにし「老婆みたい」とショックを受けた。ファッションが好きで、10代のころはデザイナーまで目指していた面影はすっかり消えていた。
「昔の私に再会したい」。学生時代以来の金髪に染め、グレーやベージュなど地味な色の服をすべて捨てた。たんすの奥から引っ張り出した色鮮やかな洋服を身にまとうと、不思議と気持ちも明るくなった。人目を気にして自宅に籠もりがちだったが、堂々と街中を歩くようになり、次第にうつ状態は改善。そんな姿に主婦仲間らもファッションのアドバイスを求めた。
評判は広まり、50歳からはフリーのスタイリストとして活動するように。「良い印象を与えるためにはどんな服装がいいか」などと相談する起業家も多く、これまでに約300人を担当。昨年からはティックトックに日々の服装の投稿も始め、自宅のベランダでファッションショーを行う自称「ベラコレ(ベランダ・コレクション)」の様子は人気を博している。「TAEKOさんのようにすてきに歳を重ねたい」「本人が一番好きな格好が一番いい」などとコメントが寄せられ、50万回以上再生される動画もある。
一貫して伝えたいのは、「服装が変われば、生き方も変わる」という思いだ。郷さんはきっぱり言う。「年齢や体形で着たい服を諦める経験は誰にでもあるはず。でも考え過ぎ。人生着たもん勝ちでしょ」
「年相応」とギャップ
宿泊予約サービスを提供する「ゆこゆこ」(東京)が50代以上を対象に実施した「おしゃれ意識」調査では、女性の8割がおしゃれに「関心あり」としつつも、3割弱は自分の着たい服と世間の思う年相応な服にギャップがあるとの悩みを抱えていた。
加齢や体形の変化で、似合う服が分からなくなったり、サイズの合う服がなかったりと、洋服を選ぶ際の不満も目立った。また、「結局無難なデザインや色に落ち着いてしまう」「好みの服を見つけても年齢を考えて諦めることが増えた」といった切実な声も寄せられた。
一方で、「派手と思っていたピンクのコートを褒められたことが自信や勇気につながった」という回答もあった。同社の担当者は「気に入った服を身に着けることで気持ちが明るくなり、おしゃれの悩みも解消されるのではないか」と話している。
着たい服着る アラ還主婦の奇抜コーデ「いいね」 - 産経ニュース
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