自治体が使用目的を示した上で寄付を募るクラウドファンディング(CF)型のふるさと納税が広がっている。寄付者側が賛同できる事業を選んで応援できることから、好評を得ているようだ。ただ、使用目的によっては自治体予算で対処すべき部分にまでCFを利用しているとも受け取られかねず、堺市では10月から消防服の購入費用を募って批判も起きた。専門家は「今後も成長が見込まれる分野。自治体が説明を工夫する必要がある」としている。
「本来税金で賄うべきだ」「腑(ふ)に落ちない」。10月上旬、交流サイト(SNS)でこんな言葉が飛び交った。財政危機で収支改善に取り組む堺市が、同月から「新人消防士応援プロジェクト」として始めたCF型ふるさと納税に対する反発や疑問の声だ。
新人消防士が訓練に使用する消防用被服などを追加購入する際の費用100万円を12月末まで募集している。永藤英機市長がSNSで寄付を求めると、賛同も一部にはあったが、多くが否定的な意見だった。
市消防局によると、新人隊員には消防服2着を支給している。しかし、激しい訓練で損耗するほか、夏場の訓練では1日に数回の着替えが必要な場合もあり、OBの古着を使うなど苦心してきたという。隊員の個人差もあり、予算の段階で平等に十分な量を準備することは難しい事情もある。そこでCF型ふるさと納税で支援を求め、返礼品に消防体験ツアーを用意した。
批判的な意見に対し、永藤氏は10月18日の定例会見で「安全安心に関わる部分については適切に予算措置をしている。士気向上を図るプラスアルファとして知恵を絞った」と説明する。
ただ、インターネット上の評判とは裏腹に、今月21日の時点で50万円を超える金額が集まっているという。
平成20年度に始まったふるさと納税は、上限額以内なら自己負担が年間実質2千円で各地の特産品を返礼品としてもらえるとして、近年人気を集めてきた。総務省のまとめによると、全国自治体(1788団体)に対する寄付総額は、返礼品の割合規定が変更された令和元年度などを除いて増加傾向で、3年度は8302億円。5年前の平成28年度(2844億円)からほぼ3倍に増えた。
また、使途を選択できるもののうち、目標金額や期間を設定したCF型を導入した自治体は、平成30年度は204団体(11・4%)だったが、令和3年度には318団体(17・8%)まで上昇。自治体にとっても寄付を募る手段の一つとして浸透しつつある。
CF型のふるさと納税は使用目的として、子供の貧困対策や動物保護活動、地域の新たな特産物の開発などさまざまな選択肢がある。ふるさと納税制度に詳しい慶応大の保田隆明教授は「自治体が地域の課題などを明らかにしてCFで寄付を募ることは、身近な問題を考えることにつながり、決して悪いことではない」と述べる。
堺市の消防服購入を巡っては賛否が起きたが、保田氏は「寄付者側がどう認識しているのか、現状を知ることができたのではないか。次にどう対応するか、議論が進めることができる」と指摘。今後もふるさと納税でCF型が増えるとみており、「自治体側が寄付者側を納得させる丁寧な説明ができるかが課題になる」としている。(小泉一敏)
クラウドファンディング 群衆(クラウド)から資金調達(ファンディング)するという意味の造語で、インターネットを通じて実現したいアイデアやプロジェクトを公表し、賛同した人から資金を集める仕組み。ふるさと納税の中でも、目標金額や募集期間などを定め、特定の事業への寄付を募るものは、総務省が「クラウドファンディング型」に分類している。
ふるさと納税で消防服購入が物議 クラファン型普及も「説明に工夫を」 - 産経ニュース
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