入学式のシーズンを迎えるなか、学生服の納品遅れが相次いでいる。昨春は入学式に間に合わない大幅な遅れが問題化したが、なぜ今年も納品遅れが繰り返されたのか。関係先を取材した。
生地の原料が高騰
アパレル業界の構造は、川の流れに例えられ、糸の製造などが「川上」、縫製などが「川中」、流通・販売などが「川下」と呼ばれる。メーカーなどによると、川上にあたる生地の納品が遅れたことで、その後の縫製、販売に影響したという。
生地の素材、ポリエステルは石油が原料で、ウクライナ侵攻で価格が高騰。さらに生地を作る中国の工場もゼロコロナ政策の影響を受けた。学生服の縫製は主に日本で行われているが、円安でアパレル業界全体の国内回帰が進んで国内の縫製工場への受注が増加したことも影響した。
学生服を製造・販売する菅公学生服(岡山県岡山市)でも昨年に続き、納品に遅れが生じた。広報によると、「生地が遅れて縫い始めることができず、厳しい状況になった」と明かす。制服のモデルチェンジで新しい生地が必要となり、昨年11月に届く予定だったが、今年2月に納品されたケースもあった。
ジェンダーレス対応も原因
ジェンダーレスの流れに対応するため、詰め襟の学ランやセーラー服をブレザー型にし、性別に関わらずスラックスかスカートを選べるようにするなど学生服のモデルチェンジが集中したことも、納品が遅れた大きな原因になっている。
大阪市に本社がある毛織物メーカー、日本毛織(ニッケ)によると、全国の中学・高校のうち、学生服のモデルチェンジを行ったのは、2023年は748校で21年の3倍以上となった。
菅公学生服は急増するモデルチェンジなどへの対策として、これまでは国内にある19の工場ごとに、学ラン、ブレザーなど、決められた種類の服を縫っていたが、需要に応じて柔軟に対応できるように進めているという。
学生服を製造・販売するトンボ(岡山市)でも、ウクライナ侵攻の影響で生地の仕入れが遅れた。担当者によると、紡績メーカーがポリエステルの原料の調達が困難となったため、ポリエステルの糸が作れず、生地を作ることができないとの理由で、通常注文から2~3カ月で届くところ、半年以上かかったケースもあったという。
同社でもモデルチェンジの影響は大きく、「ブレザーになると、生地の種類も多くなり、ジャケットとボトムスの生地も異なる。生地の小ロット化が進み、生地の手配も難しくなった」と説明する。
同社では、注文時期の前倒しや、海外生産を増やすことも検討しているが、海外ではロット数が少ないと受注を受けない工場が多いという。
「ギリギリ間に合った」
神奈川県で学生服の製造・販売も行っている学生服のT&Yでも、メーカーからの学生服の入荷が遅れ、対応に追われた。岩堀成悟代表によると、入学式は6日から始まり、各メーカーとは3月25日に納品の契約をしていたが、納品は遅れ、遅いものは入学式直前の4日に届いた。
制服は届いてすぐに客に渡せるものではなく、裾上げをしたり、刺繍(ししゅう)を入れたりする必要もある。大急ぎで作業を進めた結果、遅れた分も3日~5日には納品することができた。岩堀代表は、「入学式までにギリギリ間に合った」と胸をなでおろした。
岩堀代表は、製造の遅れが夏服や来年以降の製造にも影響すると指摘。「モデルチェンジする学校は今後も増えていくことが予想され、今後も学生服の納品の遅れは繰り返されるのでないか」と懸念を示している。(本江希望)
学生服の納品遅れ、今年も深刻に ウクライナ侵攻やモデルチェンジ急増が要因 - 産経ニュース
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