石油業界に次いで、世界第2位の環境汚染産業といわれるアパレル業界。その一因として挙げられるのが、大量生産によるデッドストック(流通在庫品)や、購入したものの利用機会が少なく廃棄処分されるアイテムの存在だ。こうしたデッドストックやタンスの肥やしをテクノロジー活用により削減する取り組みを始めたのが、中古服ECモールなどを運営するスタートアップ2社だ。早くも、ECモール内の購入率が7.6倍になったケースも出てくるなど売り上げへの好影響も出ている。
米国のファッションメディア「The Business of Fashion」と、大手コンサルティング会社の米マッキンゼー・アンド・カンパニーの共同リポート「The State of Fashion2019(2019年のファッション事情)」によると、「消費者が購入する衣料品の数は、15年前よりも60%増加している一方で、その消費期間は半分になっている」という。
また、シンクタンクの日本総合研究所(東京・品川)が、環境省の委託により20年に公開した調査「環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務ー『ファッションと環境』調査結果―」では、国内における20年の衣類の新規供給量は計81.9万トンに及び、そのうち78.7万トンは事業所または家庭での使用後に手放されると推計されている。手放された後に廃棄される衣類は約65%にのぼる一方、リサイクルは約16%、リユースは約20%に留まり、リサイクルやリユースされる割合は低いのが現状だ。
このようにファッション業界の課題となっている、大量生産・大量消費・大量廃棄の現状を改善しようと取り組んだ結果、売り上げ向上にもつながった例がある。その取り組みを紹介しよう。
アパレルブランドが抱える2つの課題
ウィファブリック(大阪市)が運営する、衣服の廃棄ロスを目指すアウトレット通販モール「SMASELL(スマセル)」。17年に開始した同サービスは、21年時点で1200社、2500ブランド(前年比5.8倍)を扱い、累計21万人(同3.1倍)が利用するなど急成長を遂げている。
SMASELLが通常のECサイトと異なるのは、出品されている商品の多くが、企業で売れ残ったデッドストック、つまりキャリー品と呼ばれる旧型の商品や古着、サンプル品という点だ。これらが定価の50~90%オフ程度で販売されている。
ブランドが自社の流通経路で販売しきれなかったデッドストックは、「バッタ屋」と呼ばれる業者に二束三文で販売されるか、廃棄に至るケースも少なくない。前者の場合は売り上げが過剰に小さくなり、後者の場合は、サステナブル(持続可能)の観点から好ましいことではないという懸念がある。いずれにしても、ブランド側は売れ残り品をどう扱うべきかという課題を抱えていた。
そこで注目され始めたのが、SMASELLだ。ブランドはデッドストックをSMASELLに出品することで、「アウトレット品」として販売ができる。つまり売り上げを確保しながら、環境にも配慮でき、同時に上記2つの課題解決に取り組めるというわけだ。ユーザー側のメリットも大きい。SMASELLで商品を仕入れる企業や消費者は、正規価格よりリーズナブルに商品を入手できる。そのため、年々利用者が増加している。
そのSMASELLが、22年7月に導入したのが、オンライン・クローゼットアプリ「XZ(クローゼット)」を開発するSTANDING OVATION(東京・渋谷)のWeb接客ソリューション「XZ-biz(クローゼットビズ)」だ。
XZは、ユーザーが登録した手持ち服から、AI(人工知能)スタイリストが着回しコーディネートを提案するオンライン・クローゼットアプリ。XZ-bizは自社ECサイトを有する企業向けサービスで、エンドユーザー(消費者)が導入企業のECサイトや実店舗で購入した洋服の情報を基にして、Web上に自動でオンライン・クローゼットが生成されるというものだ。それらの情報とECサイト上で販売している商品を組み合わせて、お薦めのコーディネートを画像で提案する。
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