カインズやワークマンを抱えるベイシアグループの中核である総合スーパーのベイシアが、レディスアパレル小売り専門店のハートマーケットとの協業商品を展開し始める。両社で新ブランド「&H」を立ち上げ、12月14日からベイシアの一部店舗で数量限定販売する。
ベイシアの担当者によると、婦人衣料の売上高構成比が2006年の22.4%をピークに、現在18.8%まで低下している。量販店における衣料品部門の共通した悩みである「来店客数はあるものの、衣料品売り場にまで足を延ばしてもらえない」という問題点を、今回の協業という取り組みを通じて、解決したいと考えているようだ。
一方、協業先のハートマーケットは、1993年に群馬県前橋市に1号店をオープンした後、イオンモールやららぽーとなどの大型商業施設に相次ぎ出店。16年度(17年2月期)には売上高100億円を達成したが、直近はコロナの影響もあってか、60以上あった店舗数を減らす(12月12日時点で51店舗、公式Webサイトから確認)など規模縮小を余儀なくされているようだ。
同社は、今まで卸売りをした経験がない。来店客が見込める環境の中で、賃料や人件費という固定費の負担のない売り場に進出するということは、新たにチャレンジを試みたといえよう。
衣料品は落ち込むも、食品が伸び
「日本チェーンストア協会加盟店の衣料品年次販売額」を見てみよう。06年に販売総額に対する衣料品販売額の構成比は12.9%だったのが、直近の21年では5.5%と半分以下にまで落ち込んでしまっている。
この間、チェーンストア協会加盟企業も85社から56社に減ってしまっているとはいえ、食料品の販売額は伸びている。食品販売額構成比は60.3%から68.6%へと上昇しているのだ。つまり、ベイシアだけでなく多くのチェーンで「衣料品が売れない」という悩みに直面していることが分かる。
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振り返れば00年前後以降、総合スーパーには逆風の時代が続いている。バブル景気が弾け、景気に下降の兆しが見えていた当時、忠実屋、長崎屋、ダイエー、マイカルといった不採算が続くチェーンの統廃合とともに、品ぞろえ勝負の量販店への否定的な見方さえあったと記憶する。
“失われた30年”の始まりとともにデフレ時代が到来し、生活者のライフスタイルも大きく変わった。大きな理由として、共働き世帯の増加が挙げられる。厚生労働省発表の「共働き等世帯数の年次推移」を見ても分かるように、94年に初めて共働き世帯が男性雇用者と専業主婦からなる世帯を超えて以降、年々共働き世帯は増加。07年には1000万世帯を突破し、今日では共働き世帯が「当たり前」の世帯像として定着しているといえよう。
こうした共働き世帯の増加は、世帯収入の増加以外にもたらした変化があった。それは家事負担の軽減というニーズだ。
「忙しさ」がカギに?
家事負担の軽減というニーズに応えたのが、当時、総合型量販店が力を入れ始めたチルド食品だった。冷凍技術の進歩が、「冷凍食品=手抜き」というイメージを、時短でおいしいご飯も食べられるというプラスのイメージに転換し、一気に支持を集めることになる。
チルド食品の台頭は、それまで食品専門チェーン店に押され気味だった総合型量販店の客離れが食い止められるきっかけになった。それが、上述した日本チェーンストア協会加盟店のデータにおける、食品カテゴリーの売上構成比が向上した要因の一つではないかと考えている。
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話を戻そう。共働き世帯が増え、忙しさが増した現代人にとって、「買い物」は一度で済ませるに越したことがないはずだ。それなのに、日本チェーンストア協会加盟店のデータからは、食品が伸びる一方で、衣料品の売り上げが落ち込んでいることが分かる。つまり、それぞれ別の店で買い物をしているという見方ができる。
一見、合理的とは思えないこの行動を多くの人がとる理由は、量販店の衣料品売り場に期待をしていない、興味を持っていないことも一因だろう。
そんなイメージを覆し、総合スーパーが衣料品売り場に再び足を踏み入れてもらうには、生活者に対して明確なメリットをアピールするしかない。例えば、総合スーパーの強みは、広大な店舗スペースを生かした品ぞろえの幅だろう。この特長を、最大限に活用するのはどうだろうか。
昨今では、コンビニエンスストアも衣料品などに乗り出しているが、売上至上主義によって生まれる類似商品を集めるケースが多いと感じている。総合スーパーとしては、コンビニ型ではなく、それぞれの地域特性に合ったニーズをくまなく拾い上げ、欠落商品のない品ぞろえを目指すべきだと考えている。
今回の協業は試金石
ベイシア側から見て、ハートマーケットの取り組みに期待できる効果は、第一に生活者の興味を引く集客策だろう。ユニクロでさえ、「感謝祭」や「誕生祭」といった大きなセールイベントに合わせて、集客対策としてMARNIやJW ANDERSONなどと協業しており、自社にないブランド、メーカーと手を組むのは有効だ。
もう一つ注目したいのは「同郷企業」であること。流行に左右されるファッションにおいて、地域色を出すのはなかなか難しいのだが、同郷企業同士という組み合わせに親しみを感じられれば、好感を持って受け入れられるのかもしれない。
あくまで、今回の協業は、一つの集客策であって量販店衣料品改革の第一歩でしかない。総合スーパーの衣料品部門が地元、そして多くの生活者からの支持を取り戻すには、これからの取り組みにかかっている。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)

1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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