「レス・イズ・モアな気分を確かに感じます。ただし、今までとは異なるかたちで」。その意味をジョナサン・ウィリアム・アンダーソンはこう語る。「現在私たちが向かっているモダニティは、かつてのようなものではありません。90年代のモダニティとは違う、もっと独特な何かが起こりつつあります」
服と服にまつわる思索を最優先に
巨大なファッション産業の標準化が進む時代にあって、またオーディエンスとコレクションの間に立ち塞がるエンターテインメントの嵐が私たちの耳目をかすめ取っていくなか、私たちから奪われているものがあると思わされることがある。奇妙なことだが、それは服そのものに注目する機会だ。
アンダーソンは、服そのものと服にまつわる思索を最優先事項に掲げようとする。そんな彼はラグジュアリーの世界において極めて希有な存在だ。その姿勢はラディカル、あるいはアヴァンギャルドとさえ感じられることも多い。だから、モデルを真っ白のスペースで歩かせるなど、彼が今回、ロエベ（LOEWE）を表現する手段として、ミニマルで伝統的な様式を選んだことにはほっとさせられた。「おそらく──いや、そうなってほしいのですが、これからデザイン業界にいることが居心地悪く感じられる時代に突入するでしょう」。彼はそう言って続けた。「何か新しいことを見つけなければと、もがくようなね」
上述の話題は彼のメンズウェアショー後のインタビューで触れられたものだ。ショーは素晴らしかった。目の前に繰り広げられる表現にただ反応すればいいという状況が、どれだけ人を夢中にさせるか、人の心を刺激するかを証明してくれた。そこで披露されたアイテムの構成は見たことのないようなものだった。
異業種の職人が素材にアプローチ
アンダーソンの世界観において服はいくつもの階層を持つテーマだが、彼のアプローチは驚くほど明確なフォーカスがなされた“還元主義的な行い”と言える。本コレクションはファッションの生産工程を物質的な側面から捉え強調したもので、立体彫刻の領域にまで踏み込んでいる。職人の手により銅やすず合金から鍛造された金属製のジャケット、帽子製造業者によってかっちりとした型に仕立てられたコートがその好例だ。背中に留め具が付いたシャツについて、私たちは思わず身を乗り出してその構造を見て取ろうとした。中には硬く、シワの寄った皮紙が用いられたものもあり、それらを作るためには伝統的な製本業者の手が借りられた。ボクサーショーツには繊細なシルクサテンが使われ、レザーのアンクルブーツのみと組み合わされていた。「堅固なものの下に隠れた官能性というイメージがほしかったのです」とアンダーソンは話した。
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