
きつい、汚い、危険の3K職場と思われがちな建設や土木作業の現場が変わりつつある。キーワードの一つは「リモートワーク」だ。
長崎県島原市のゼネコン、星野建設の辰田真里江さん(24)は1年前の冬、突然重機のオペレーターを務めるように言われた。
それまでは入札手続きや許認可の書類作成が主な仕事の事務員。戸惑いは大きかった。
仕事は、雲仙普賢岳のふもとにたまった噴火堆積(たいせき)物を遠隔操作で運ぶという内容だった。
やりたくない……。それが、正直な気持ちだった。
1990年に始まった「平成大噴火」による噴出溶岩量は約2億立方メートルにもなり、山肌に残る膨大な噴火堆積(たいせき)物は今も雨で流れ落ちてくる。土砂の運搬が必要だが、現場は土砂崩れの危険があるため、人の立ち入りができない。
1キロ以上離れた遠隔操作室で、平均年齢25歳の6人が作業した。いつかは月などでの建設作業に関わることを目標に、宇宙服を模した作業着を着た。
嫌々始めた辰田さんは、今では「やってみたら楽しかった。作業環境が良すぎた」と顔をほころばせる。
作業は映像を見ながら油圧ショベルで土砂を掘削し、ダンプの操作はボタンを押すだけ。GPSを使い自動走行させたという。他のゼネコンで無人化施工にあたった経験のある社員がサポートした。
起用した会社側には「仕事の幅を広げるとともに、デジタル技術によって安全で体力面でも不利にならない女性活躍のモデルケースにしたい」という思いがあった。
辰田さんにとって、服が汚れないのがうれしかった。遠隔操作では、重機の音が聞こえず、高低差や遠近感、振動もわからなかったが、1、2週間で慣れたという。
「暖房、加湿器があり、1月の寒い中でもとても快適に操作ができた。将来的には女性だけでも作業に取り組みたい」
国土交通省によると、2021年の建設業の年間実労働時間は全産業平均より346時間長く、直接的な作業を担う技能労働者の数は、309万人で、ピーク時の455万人(1997年)から減少の一途をたどる。若手技能者の確保と育成は急務となっている。
業界ではリモート操作のほか、ドローンやロボット、仮想空間の活用が急速に進んでいる。まるでゲームやSF映画のような世界だ。テクノロジーが魅力あふれる職場を作り、人手不足を解消する鍵になりそうだ。(鈴木智之 高橋豪)
「宇宙服」で遠隔操作 女性事務員は土砂運搬の重機オペレーターに:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
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