とはいえ、今シーズンはアーデム・モラリオグルのショーほどこのテーマを直接的に扱ったものはなかったかもしれない。女王エリザベス二世の葬儀の前日、そしてイギリス現代史においてほとんど前例のないほどの政治的・経済的混乱の中で行われたアーデムのショーはあまりにも絶妙なタイミングで、イギリスがこれほど顕著に分裂し始めるはるか前からモラリオグルがコレクションの準備を始めていたということを失念しそうになる。今ほど「修復」の物語がふさわしいときはない。「最初は本当に抽象的で、朽ちていくものや、修復を欲する人間の想いについて考えていました」と、モラリオグルはこのコレクションが生まれた背景を振り返る。いかにもパンデミック後らしい出発点だと私は思ったが、モラリオグルは肩をすくめてみせた。「デザイナーという職業は、常に底流を探っているもの、あるいはそうあるべきものです」と彼は言う。それから彼はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館やナショナル・ギャラリーの保存修復室での体験を熱く語り、修復師たちが古典派の巨匠たちのキャンバスを蘇らせる様子を見て23年春夏コレクションのコンセプトに肉付けしていったのだと教えてくれた。修復師らの緻密な作業は、高度なテクノロジー、アーカイブの綿密な調査、そして少なからぬ想像力と一体なのだという。「ある絵画はその一角が完全に破損していたのですが、修復師が手探りでそれを直していく様子がとてもすばらしかった」と話す。「また、古代ローマのガラスの器も破片を集めて組み立てられていましたが、近づいてみると、欠けやひび割れがよく見えるのです。……それが今回のコレクションのきっかけになったと思います。壊れているものを取り上げ、壊れていない一つの状態にするという探求の真っ只中にいる感覚を、コレクションでとらえたかったのです」
かつてはゴシックのテーマであった「朽ちる」ということが、これほどスリリングで生き生きとしたコレクションを生み出すとは、何とも面白いものだ。それは「未完成」なファッションの表現に共通する特性であり、今のこの一瞬という感覚に満ちている。この不確実な感覚と可能性こそが、人と商品、現実とファンタジーを区別するのだ。そして現実の世界では、誰もが自分の力ではどうにもならないことに打ちのめされている。
ヴァン・ノッテンは「パンデミックが、私たちが一種の夢の中で生きていたということを教えてくれた」と言う。「何でもできて、何でも手に入れられると。それから……すべてが止まってしまった」。私たちは、これまでとは違うやり方で時を過ごし、価値観を再構築し、そしてこれまでの生き方が不安定な構造を前提にしていたことに目を向け、それを理解するしかないのだと彼は続ける。「パンデミックを経た今、指を鳴らして『ノーマル』な状態に戻れると考えるのは馬鹿げています。なぜなら今、私たちは、ノーマルとは何だったのか、という疑問を持っているからです」と。「ランウェイに戻り、どのようなコレクションを発表したいかと考えたとき、このことがとても気になりました。世界に対する自分の見方や、その中にある自分の居場所が変わったことを伝えないのは悲劇だと。そして、同じように考えている人たちのために服をデザインしたいと思いました」
ヴァン・ノッテンの服に、不思議と自分は理解されていると感じてしまうのは、完璧ではないのに完璧であるかのように装うことを拒否しているからだ。これまで完璧であったことはないし、これからもそうなることはない。それはリッソやモラリオグルが手がけた服、そしてその他多くのズタボロになった23年春夏コレクションの服からも感じられることだ。人生とは、過ぎ行く瞬間の連続であり、苦難と再生の繰り返しであること、そして私たちは皆、アーデムの修復師のように、私たちという存在の緩んだ糸を絶えず編み直し、完璧ではないながらもそれぞれに崇高なものを創造しようとしていることを、これらの服は認めているのだ。
フィットネススタジオのザ・クラスを創設したタリン・トゥーメイは、「『完璧』という概念を、自分がこうあるべきと考えるものから遠ざける必要があります。そういうのは大抵、社会に溶け込むため、あるいはビジネスで成功するためにはそうしなければならないと社会が言っているものです。そして今、この瞬間の自分にとっての完璧とは何かを考え始める必要があるのです」と語っている。ジャヴィッチやサカラのデュボワーズとティングルと同様、トゥーメイは自己改善に対してよりあたたかみのあるアプローチを構築してきた。ザ・クラスで「勝つ」ということは、自分自身のニーズを理解することなのだ。「がむしゃらに運動して溜まったエネルギーを発散したいという日もあれば、じっとしていなければならない日もあります」とトゥーメイは言う。「私たちは人間ですから、立ち止まったままではいられません。そして私たちを取り巻く環境も変化し続けているのです」
Styled by Alex Harrington Hair: Tamara McNaughton Makeup: Fara Homidi Manicure: Tom Bachik Tailor: Hailey Desjardins Produced by Connect The Dots Set design: Spencer Vrooman Caption Text: Akane Maekawa
ありのままを輝かせる服と、“不完全”な美しさを讃えて - VOGUE JAPAN
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